NHK EDUCATIONAL

ユニバーサルデザインの企画開発のための場づくり

NHKおよびNHK全関連グループにおいて、“放送局”から“公共メディア”への転換が求められています。一方、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、視覚や聴覚に障害のある人をはじめ、より多くの人たちがともに番組やコンテンツを楽しめるユニバーサル放送とサービスの提案が急務。そこでNED創発Cafeでは、「届けたい人とともにつくる、共創ワークショップ 〜視覚障害者・聴覚障害者とともに〜」と題し、ユニバーサルメディアの企画開発を行いました。

Point

視覚障害者、聴覚障害者、技術系社員、外部クリエイターを交えた共創ファシリテーション

熱意あるリードユーザーとの関係構築

即興で企画を形にするラピッドプロトタイピング

インクルーシブデザイン

エスノグラフィックリサーチ

共創ファシリテーション

組織づくり

課題

福祉番組などの制作現場では、特に視覚障害者と聴覚障害者への対応が求められている。しかし、彼らの実態を把握しきれていないため、番組・コンテンツが届けられていないのかもしれない。

BIOTOPEがしたこと

聴覚障害者・視覚障害をワークショップに招き、新しい番組・サービスを共創でデザイン。社内での障害者理解の促進や、彼らのインサイト獲得、それらを踏まえた企画開発を支援した。

結果

4つの案を社内企画としてNHKの「公共メディアキャンペーン(社会課題)」に応募。採択に至らなかったが、そのなかの一案が関連技術をもった企業とつながり、実現化に向けて進行中。

成見由紀子
Yukiko Narumi

NHKエデュケーショナル デジタル推進室主任プロデューサー NHK国際放送でSNS連動番組「HAIKU MASTERS」で金賞を受賞。AR/VRなどの新しいメディアを活用した教材を開発中。

共創ワークショップを立ち上げ、他社との協業を推進

 

NHKエデュケーショナル(NED)は、NHK本体から受注したEテレ向け番組の制作を事業の柱にしています。2015年にBIOTOPEさんの協力のもと立ち上げた共創ワークショップ「NED創発Cafe」の目的は、社内の組織横断だけではなく、本社やグループ会社も巻き込み、外部企業や個人とともに新しい事業をつくり出していくこと。最初の3年は、社外のさまざまなつくり手の人たちと一緒に、テクノロジーからの視点で“未来の学びのコンテンツ”を考え、一定の成果をあげることができました。

NHKEDUCATIONAL


 

多様な価値を認め合い、ともに生きる社会の実現のために

 

2018年、NHKではおよびNHK全関連グループにおいて、「2020年の公共メディア像」として、“分断を超えて”“情報基盤から社会基盤へ”をキャッチフレーズに、ただ番組を“届ける”だけでなく、ありとあらゆるタッチポイントで、コンテンツを“届けきる”ことが提言されました。またNEDとしても、2020年のオリ・パラ関連の企画提案や、それ以降を見据え、障害の有無や年齢、性別、国籍などにかかわらず、みんなが楽しめるユニバーサルな放送・サービス拡充に取り組んでいく必要があります。

 

新しい番組・サービスを、届けたい人とともにつくる

 

そうした背景から、BIOTOPEさんと議論のうえ、NED内で福祉番組を中心に制作している現場に目下の課題をヒアリングした結果、障害者のなかでも、特に視覚障害者と聴覚障害者への対応が求められていることがわかりました。“届けきる”ためにも、彼らの具体的なライフスタイルや情報ニーズ、メディアの活用方法を理解しながら、番組やサービスをつくっていく必要があるのではないか。そう考え、2018年のNED創発Caféでは、届けたい人、つまり視覚障害者と聴覚障害者と共創ワークショップを行うことにしました。

 

先入観をなくすために、事前にセッションを実施

 

今回は、“社内で障害者理解を促進し、人材育成につなげること”“障害者に関するさまざまなインサイトの獲得”“アウトプットとして、具体的な番組・サービス提案に落とし込むこと”などが主な狙い。最終的なゴールは、ここで出たアイデアが、NHKの新しいユニバーサルな番組やサービスとして世に出せるようになること。そこで、実際のプログラムを始める前に、BIOTOPEさんから事前に行なった障害者の行動調査レポートを共有してもらい、社内に視覚障害者、聴覚障害者、盲導犬を招いて、相互理解を深めるためのセッションを行いました。

 

テレビよりスマホを使いこなしていた障害者

 

共創のプログラムは、全4回。第1回は、障害者が普段触れている情報やメディアを知り、潜在ニーズを知るためのインタビューを実施しました。そこでまず驚いたのが、彼らのほとんどが健常者よりもはるかにスマホを使いこなしていたこと。私たちは、情報はテレビから得るものだと思い込んでいたこともあり、逆に「テレビはあまり……」という意見が多かったのには衝撃を受けました。聞いてみると、その原因のひとつにあったのが、スマホにおける番組の案内不足。つまり、彼らが容易に番組までたどり着けるような仕組みがデザインされていなかったのです。

 

インタビューでは出てこないインサイト発掘のために

 

第2回は、障害者と一緒に渋谷の街を歩き、彼らが無意識で行なっている行動、もしくは当たり前だと思っている行動をともにするフィールドワーク。スポーツはテーマならスポーツバー、エンタメがテーマならゲームセンターというように、各チームがテーマに沿った場所に出かけました。ここでも気づきは多く、弱視の人は大型テレビを観ることは難しいけれど、VRゲームなら楽しく遊べるというのはその一例。視覚障害にも段階があり、まったく見えないと思い込んでいたのが、テクノロジーの力で解決していけるかもしれない、というのが私のなかの大きな発見でした。

 

具体的なシーンを演じることで、障害者の感情を共有

 

その翌日には、BIOTOPEサイドからUI / UXデザイナーやコミュニティデザイナー、エンジニアが議論に混じり、障害者に利用してもらうためには、どんなアイデアがどんなふうに使われたらいいのか、それぞれの立場で意見を交換しながらアイディアを最終的にユーザー(障害者)を中心とした物語形式でまとめました。ユーザーがどういう感情で、どういうコンテキストで、そのコンテンツを見て体験するのか、考えさせられました。他チームからのフィードバックを得るために、ここで一旦コンテンツづくりは終了。発表は、パワーポイントのスライドなどは使わず、みんなの前で“演劇”方式で行いました。これがとても難しく、演劇なのに目が見えない人がいて、耳の聞こえない人もいる。どうやって情報を届けるのか、各々が十分に悩んだ分、得るものも大きかったと思います。

 

最終的なアイデアを、役員の前でプレゼンテーション

 

続く第3回は、障害者抜きで、メンターによる企画のブラッシュアップです。ここでのポイントは、これまで得た障害者のインサイトをもとに発想するけれども、結果的に障害者・健常者に関わらず、より多くの人に届くコンテンツになっていること。以上を踏まえ、最終回のプレゼンテーション会に臨みました。会場には、社内の有志や担当役員、共創に協力してくれた障害者だけでなく、NHK本体のオリ・パラ担当者の姿も。提案された企画に対して、参加者から鋭い指摘や温かいメッセージが飛び交いました。

 

外部企業とつながり、実現化に向けて前進

 

結果的に、4つの案を社内企画としてNHKに提出しましたが、残念ながらどれも採択には至りませんでした。ただ、そのなかのテロップの改良案を提案したチームの企画が、関連技術をもっている企業とつながり、実現化に向けて動き出しています。いまは先行する技術と絡めて何ができるのかを検討中ですが、ユニバーサルメディアとしてどんな価値を創出できるのか、これからも粘り強く、いろんな可能性を探りながら取り組んでいこうと思っています。

タネは残ったか?

BIOTOPEさんから、障害者や高齢者、外国人など、従来はデザインプロセスから除外されてきた多様な人たちを、上流からから巻き込む「インクルーシブデザイン」という手法があると聞き、すぐに挑戦したいと思いました。実際にやってみると、つくり手である自分たちが思い込んでいた障害者のイメージが、実際とは乖離していることが多いいたことが判明。それにより社内の福祉番組を扱う制作現場では、番組の内容だけでなく、“届ける”までのプロセスを意識するようになったのではないかと思います。 最近では、オリ・パラ関連番組制作に携わるチームが、このときのインサイトから、番組演出に変化が生まれています。そして、それらの番組演出に関して、創発カフェで出会った障害者のみなさんに意見や感想を頂くなど、交流は続いております。 また、NHK本体の関連部署とも連携が深まり、障害者を招いての勉強会なども交互に行うようになったのも、今後こうした動きを広めていくうえでは追い風になると思います。

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