Santen, IBF Foundation, JBFA

SDGsを自分ごと化するためのビジョンデザイン

2020年10月、参天製薬(以下Santen)とインターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(以下IBF Foundation)、日本ブラインドサッカー協会(以下JBFA)は視覚にかかわる社会問題の解決に向けて協力する10年のパートナーシップ契約を発表。しかし立場や組織風土が異なれば言語や価値観も違います。この先「組織の壁」を越え、長期にわたり共に歩んでいくためには心のよりどころとなる「大義」が不可欠。BIOTOPEではそのビジョンづくりの過程におけるファシリテーションで伴走しました。

Point

ビジネスとソーシャルのセクターを越えた協働

組織風土や課題感の異なる組織を越えた大きなビジョンのデザイン

プロジェクトの全プロセスをオンラインで実施

大義のデザイン

ビジョンの可視化

コピーライティング

オンラインワークショップ

セクター越境型

課題

ビジネスセクターとソーシャルセクターでは立場の違いから課題に対する実感値や組織風土にギャップがあり、それを認識し埋める必要があった。そのうえで両者の考えを統合させ、組織の壁を超えて共通言語となるビジョンが必要だった。

BIOTOPEがしたこと

個人の原体験の共有やお互いのアイデアを可視化して全体像を見せたりしながら、両者が同じ未来像を描けるようにする長期パートナーシップのビジョンデザインの取り組みを全4回のワークショップのファシリテーションで伴走した。

結果

SDGsを自分ごと化するための自律的な動きが出てきた。また異なるセクター同士を結びつけるビジョンづくりの過程で共に歩むパートナーとしての信頼関係が生まれ、大きな社会課題の解決に向かって長期的に取り組む土台ができた。

中野正人(右)
Masato Nakano

参天製薬入社後、 医薬情報担当者、医薬事業部営業企画グループ営業企画チーム チームマネージャー、医薬事業部事業戦略企画グループ グループマネージャー、人材開発本部人材開発グループマネージャー、医療事業部医薬営業統括中部エリア エリアマネージャー、参天ビジネスサービス営業サポートセンター センター長を経て、企画本部CSR室 室長に就任。

松崎英吾(左)
Eigo Matsuzaki

日本ブラインドサッカー協会 専務理事・事務局長
国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)理事。国際基督教大学卒。学生時代偶然出合ったブラインドサッカーに衝撃を受け、深くかかわるようになる。大学卒業後はダイヤモンド社に勤務。一般企業での業務の傍らブラインドサッカーの手伝いを続けていたが、「ブラインドサッカーを通じて社会を変えたい」との思いで、現・日本ブラインドサッカー協会の事務局長に就任。「サッカーで混ざる」をビジョンに掲げる。サステイナビリティをもった障がい者スポーツ組織の経営を目指し、事業型非営利組織を目指す。

異例ともいえる10年契約の背景

 

2019年に、2030年に向けた会社のビジョン、「Santen 2030」という長期ビジョンを作成したのですが、その際、薬を開発して患者さんの役に立つだけでなく、目に携わる企業として、光を失ってしまった人に対して何かできることはないかと考えました。そこで、ビジョンを達成するための戦略として挙げている一つが、「Inclusion – 視覚障がいの有無に関わらず交じり合い・いきいきと共生する社会の実現」というものです。これを実践しているのがJBFAさんで、その後、活動などを拝見して同じ世界観を共につくっていけると感じました(中野)。

障がい者スポーツはスポンサーシップモデルが成立しにくい背景がありますが、我々には強みも資産もある。スポーツは障がい受容に役立つだけでなく、健常者を巻き込んだうねりにしやすいのがブラインドサッカーの強みです。我々を媒体としてではなく、特徴を使いこなしてくれる企業さんと、特定の課題解決に取り組むというのが、JBFAが企業さんとお付き合いする姿勢。その意向が合致したため、Santenさんとは長期契約となりました(松崎)。

 

ビジョンづくりが必要だった理由

 

これまでいろいろな企業さんとお付き合いしてきましたが、企業とスポーツ界、そして大企業と我々のような中小零細組織では言語や価値観が違います。そのため、Santenさんともターゲットや定義にズレがあるだろうと思っていました。そこで、具体的施策を検討するより前に、まずは大きなビジョンづくりから一緒に行っていきたいと考えました(松崎)。

従来のスポンサー契約のような1〜2年のスパンだと、目先の施策レベルの話になってしまいますが、今回は10年契約で、我々が目指す世界を共に実現していくのが目的です。そこで、お互いの考えや強みを棚卸しして、論点の違いも理解したうえで、立場や組織が異なる両者が、同じ未来像を描けるようにする大義をつくるべきだと思ったんです(中野)。

 

つくりたい未来と思いを共有

 

ワークショップが始まったのは、長期契約を結んだ直後。1回目は視覚障がいに対する思いを共有するために、それぞれが「目」の領域にかかわるようになった原体験や自分がつくりたい未来のシーンを絵にして共有しました。個人的な思いともつながる内容だったので、今後パートナーとして共に歩んでいくための土台づくりとしても有意義でした(松崎)。

コアメンバーのほか社長の谷内(樹生)も参加し、今回のパートナーシップに対する社内の期待を感じました。ワークショップでは互いの深い考えが聞けたのがよかったのと、目指す未来は同じだと思っていても少しずつ違うことを認識できました。ただ、違いはあっても、埋められるギャップも多いのに気がつけたのは大きな収穫だったと思います(中野)。

 

視覚領域における社会課題の構造を可視化

 

2回目は、どんな人が課題を抱えていてそれらの課題がどんなふうにつながり合っているのか、あらかじめ各参加者が課題と感じているテーマを自分の周りの視覚障がい者にインタビューして、それを「人の物語」として共有しました。社会課題に対する解像度を上げながら、SantenさんとJBFAのビジョンを揃えていくのが非常に難しかったです(松崎)。

このワークショップ終了後に、参加メンバーから「もっと視覚障がい者のことを知りたい」という声などがあり、弊社の視覚障がいの社員に追加インタビューしたり、JBFAのスタッフと議論しました。このあたりから参加者のモチベーションが格段に上がり、自律的に参画するマインドが醸成されていった感じでした。JBFAの熱量や思い、スピード感に触れ、「こんなことができそうだ」というイメージが湧き上がったんだと思います(中野)。

 

解決アイデアの仮説づくりで取り組む機会領域を選定

 

我々もJBFAのなかで決起集会を開きました。3回目に向けて「どんな姿勢でどう参画していくか」と目線を合わせたんです。ワークショップでは、各参加者が解決したい課題に対してパートナーシップを通じて具体的に解決し得るサービスや、取り組みのアイデアをスケッチして共有。お互いの関心やパートナーシップに抱いている可能性を理解しました(松崎)。

ワークショップで出てきたアイデアは18個。最後に機会領域ごとにチームを組成し、各チームでアイデアを再検討しました。お互いの領域に対する理解や関心の違いも顕在化し、やや膠着状態になってしまったテーマもありましたが、終わってからもチームで集まり議論するチームが出てくるなど、チームダイナミズムが生まれてきたのもこのころでした(中野)。

 

2030年までの年表に落とし込んで全体の戦略を議論

 

前回のワークショップで見えてきた3つの機会領域が、どんな価値をつくり出すのか、なぜそれを両者でやるべきかを議論しました。その後、一人ひとりが「いつまでに、どんなことが起こっていればいいか」を、2030年までの年表に落とし込んでいるときは、みんな自分のミッションとしてとらえていて、本気のことを書いている印象でした(中野)。

Santenさんのメンバーは一人ひとりの熱量がすごかった。4回目のワークショップでは、各参加者の年表をタイムラインで整理し直し、それをもとに戦略を議論することで、視覚障がい者の雇用創出という具体的な未来の状態が見えてきて、少し安心しました(松崎)。

 

ビジョンの磨き込み後、社内外への測定指標を設定

 

その後、BIOTOPEさんがつくってくれたコピーライティングやストーリーをたたき台にして、3者でブラッシュアップを繰り返しました。そうしてパートナーシップの核を一気に絞り、最終段階でビジョンの魂となるステートメントを議論したのですが、どんな動詞を使うかについてはかなり時間を割きました。「架け橋となる」「溶かしていく」といった動詞を慎重に選んでいくなかで、大きなビジョンに対して、お互いがどのような取り組みをしていくのか、イメージできるようになっていったのには少し驚きました(中野)。

最後は社内外に示す測定指標(KPI)を作成して終了しました。一連の過程でSantenとJBFAは仕事のやり方や価値観もかなり違うことを認識できたのと、違うからこそお互いに学び合えることも多かった。これだけ遠い存在がビジョンという共通言語で結びつき、さらに近づいていこうというのがイノベーションにマッチしていると思いました(松崎)。

 

三者共通のビジョンをコピーライティングとイラストに集約した。

タネは残ったか

対外的な変化はまだこれから。ワークショップ終了後のこれまでの期間は、お互いの組織内でチューニングして実行を担保していくことに時間を使いましたが、ようやく準備が整ったので次のアクションにつなげていきたいと考えています(松崎)。
今回のワークショップでは、社長をはじめ経営幹部たちも自分ごととして真剣に取り組んでいたので、これならプロジェクトが10年間きちんと続いていくだろうと思いました。JBFAとのパートナー契約発表は、我々の成長戦略のひとつであるインクルージョンへの取り組みへの強い動力になったと感じています。さまざまな部署で「インクルージョンの価値観を社員一人ひとりが自分ごと化するにはどうしたらいいのか」を考え、ワークショップを開催するなど自発的な動きが出ています(中野)。

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