MARUBENI

経営変革をボトムアップで加速させるための戦略デザイン

デジタルテクノロジーの隆盛によって、従来の縦割り型のビジネスモデルやサプライヤー起点での発想に危機感を抱いた総合商社、丸紅。時代の進化に対応するために弊社とともに実施したのが、デザイン思考を取り入れた社員の内発的動機によるボトムアップ型の変革プロジェクトでした。

Point

個人に火をつけていく全社横断型の実践者コミュニティづくり

各事業部がもつデータ資産と顧客課題を掛け合わせたアイデア発想

個別機会やアイデアを俯瞰・統合した戦略やビジネスモデルづくり

事業開発

ワークショップ

戦略デザイン

組織づくり

課題

デジタル全盛の時代に、商品を軸にした縦割り組織で成長してきた総合商社の旧来のやり方ではいつか立ちいかなくなる。時代の流れに対応できるための変革が必要。

BIOTOPEがしたこと

外部環境変化の共有・対話を通じ、危機感を自分ごと化する場づくりを行った。

BIOTOPEがしたこと

全社横断のワークショップを通じて、新規事業のアイデア発想と具体的事案に落とし込むプロトタイピングを実施した。

BIOTOPEがしたこと

毎回のアウトプットを俯瞰しながら、経営企画チームとともに新たな戦略デザインを行った。

結果

プロジェクトで生まれた幾つかの案件は実証実験・事業化が進んでいる。また、プロジェクト終了後には、新しいビジネスモデルへの挑戦を加速させるIoT・ビッグデータ戦略室が立ち上がった。

早坂和樹
Kazuki Hayasaka

丸紅 デジタル・イノーべション部 イノベーション・市場戦略課 マネージャー
メーカー勤務を経て2009年に丸紅入社。オーストラリアの鉄鉱山開発プロジェクトを中心に6年ほど営業職を務めたのち、15年に経営企画部に異動。新規領域の開拓が主な担当で、デジタル・トランスフォーメーションやイノベーション推進関連の取り組みに従事。その際に新組織の立ち上げにかかわり、17年に新設されたIoT・ビッグデータ戦略室(現デジタル・イノベーション部)のメンバーに。

総合商社として時代の変化に対応するために

 

2016年、AIやIoTをはじめとするテクノロジーの進化に対し、会社として何ができるかを部門横断的に検討せよというミッションが経営企画部に下り、IoT・ビッグデータ推進委員会が立ち上がりました。そこからBIOTOPEさんとの半年間のプロジェクトがスタートしました。戦略コンサルではなく、デザインファームであるBIOTOPEさんとご一緒したのは、会社が生まれ変わるためには、ショック療法的な意識改革が必要だと思っていたので、BIOTOPEさんとならそれができるのではないかと考えたからです。

 

 

内発的動機を大事にするデザイン思考

 

戦略コンサルはロジカルに整理、提案するスタイル。一方BIOTOPEさんからは「内発的動機」を大事にしたアプローチをご提案いただきました。本人が「楽しい」「動かなきゃ」というマインドセットになるためには内発的動機しかないと思っていたので、そこを重視するBIOTOPEさんとご一緒したのは自然な流れでした。また、これまでの商社のビジネスのやり方が提供者視点、つまりいいものをお客様に届けるというマインドセットだったのを、顧客ニーズから遡ってくるアプローチに切り替える必要があり、それがデザイン思考に通ずるとは思っていました。

 

顧客視点のマインドセットへ切り替える

 

当時、会社は大きな課題に直面していました。新しい技術が産業の垣根を壊しながら他領域のビジネスモデルを駆逐し、顧客ニーズが変化していく世の中は、縦割りで商品軸の組織形成で成長してきた弊社のような企業には脅威となります。旧来のやり方ではいつか立ちいかなくなる。BIOTOPEさんとのプロジェクトでは、知の共有を全社横断的に行って自らの強みを再認識し、そのうえで顧客と向き合いソリューションを考えるマインドセットに切り替えることを目指しました。

 

ハンマーで頭を叩かれたような衝撃

 

ただ全社横断的といっても、いきなりのコラボレーションは難しい。まずは時代の変化を認識して危機感を共有する場が必要です。そこでプロジェクト前半は、シンギュラリティ大学の関係者をはじめ、さまざまな先進的な有識者の方々からのインプットをいただき、「危機感の自分ごと化」を進めていきました。元楽天の安武弘晃さんにご講演いただいた際には、参加者のアンケートに「ハンマーで頭を叩かれたような衝撃」というコメントもありました。私も、かつて時代を先取りしていたのは商社パーソンだったのが、話を聞くほどに今の最先端はデジタル界隈の人なんだと痛感したんですが、参加者の多くが同感だったようです。

 

 

商社ならではの新しい価値創造の可能性

 

プロジェクト後半は、前半でインプットした時代の変化を踏まえ、アイデアを発想し、具体的に事案に落とし込むプロトタイピングを行いました。総合商社は、事業会社も含めて多様で幅広い分野・業界の資産をもっていることが強みのひとつです。個別の事案は各部署で考えながらも、各部署がもつデータを棚卸し、それらを掛け合わせながら、アイデアの発想をしていきました。多様なビジネスモデルをもつ商社なら、あっちとこっちを掛け合わせたら新しい価値が創造できる、参加メンバーもそう感じられたと思います。事案をプロトタイプしながらブラッシュアップしていく段階では、アイデアを顧客に見せてヒアリングしました。「こんな途中のものをお客様にもっていくんですか」という参加者の反応が印象深かったです。

 

新たな未来を構想する壮大なプロトタイピング

 

全社横断の共創ワークショップで知恵を集め、各事業部に落とす具体的な事案を考えつつ、事務局側では全体俯瞰しながら組織全体の未来を考える。小林さんにファシリテートいただきながら、プロジェクト全体を通じて、新しいかたちの未来構想をした取り組みでした。経営者は最先端を感じて、変わらなきゃいけないとメッセージを出します。今回の取組みはそれをどう進めるのかをボトムアップで可視化・具体化する、壮大なプロトタイピングだったかもしれないですね。

 

組織体制の変革と新規ビジネス創出へ

 

弊社の社員は約4,000人いますが、参加者は当時の全営業本部から2名ずつの36名です。いくら新しいプロセスを学んでも、一気に会社を変えることは難しい。ただ、顧客と向き合いソリューションを考えるマインドセットや商品軸を超えて知見やアセットを掛け合わせることによる価値創造の可能性を参加者が実感し、それを自分の部署にもち帰ることができたことに、プロジェクトの大きな意義がありました。その勢いを加速するために、プロジェクトが終了した直後の2017年4月には、ビジネスをデジタルテクノロジーで高度化したり、新しいビジネスモデルへの挑戦を先導・支援するためのIoT・ビッグデータ戦略室が立ち上がっています。18年にはさらにデジタル・イノベーション部と名前を変え、新規のビジネス創出に力を入れています。

タネは残ったか?

プロジェクトで手がけた案件のなかから、フットウェアブランド、メレルの実店舗でカメラによる購買行動分析の実証実験が実現したほか、AI画像診断システムを開発するアメリカのスタートアップ企業、エンリティック社と業務提携し出資した。また前述の通りプロジェクト直後にはIoT・ビッグデータ戦略室が立ち上り、18年にはデジタル・イノベーション部へと名称を変えて変革の勢いを加速。デジタル領域での活動を進化させるほかにも、ビジネスプランコンテストを始めたり、外部企業との交流も促進している。

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