絵でさらなる議論が発生
2年前に別プロジェクトでBIOTOPEさんとご一緒したときに、ワークショップで、サービスのアイデアをデザイナーの松浦さんにそのまま絵にしてもらうと、そこからさらに議論が生まれたという経験があったんです。今回「ローンチチャレンジ」という、社内起業家からアイデアを募集するプロジェクトの実施にあたって、新規事業のアイデアを同じようにすぐに絵にしてもらえたら、各チーム内でのコミュニケーションが間違いなく進むだろうと思い、松浦さんにグラフィックレコーディングによるファシリテーションをお願いしました。
アイデアの可視化が強力なツールに
それまでも新規事業のインキュベーションはやっていましたが、各チーム内でなかなかアイデアが具体的に共有化されないことを感じていました。課題の発見から解決策の検証まで半年もかけて進めたのに、みんなの見えているものや認識がずれていて結局振り出しに戻ってしまった、というのがよくあったんです。言葉の共有だけでは、イメージがずれていることに気づかない。ならばアイデアを可視化することで、みんなの見ている世界がピタッと合ってくるんじゃないか。2年前のプロジェクトでの、絵を通じてイメージが合ったときの進みの速さを実感していたので、アイデアの可視化が強力なツールになる、そう直感で思ったんですね。
リトマス試験紙的な反応
実際に松浦さんにグラフィックレコーディングでアイデアを可視化してもらうと、チーム内の意識が揃うようになりました。そこから進捗がぐんとよくなりましたね。あと、面白かったのは松浦さんの反応でした。アイデアがうまくまとまっているチームはすぐに絵になるけど、そうでないチームだと筆が止まってしまうんです。松浦さんに理由を聞くと「使っている人のシーンが見えないと描けない。技術やシステム、商品だけだと絵になりにくい」と言われたんです。つまり、ユーザー目線のアイデアにちゃんと落とし込まれていないと絵にならないというのがわかった。松浦さんの反応が、リトマス試験紙のような目安になったんです。
根源的な部分を考えるように
デザイナーが描けないアイデアはまだブラッシュアップする必要がある。プロジェクトのメンバーもそれがわかって、売れる売れない流行る流行らないではなく、わかるわからないという根源的な部分を考えるようになりました。社内起業家たちは自信もあるから、悪く言われると拒絶反応を起こしがちですが、純粋な“わからない”という反応には危機感をもったようです。普通のメンターだと好き嫌いがあったりして、腹の探り合いや忖度したりする場合もあるけど、デザイナーならではの中立でピュアな感性による“単にわからないから描けない”という事実は、プロジェクトの精度を高めるうえで大いに役立ちました。
手触り感と身近さ
新規事業を起こすときに、デザイナーはもっとあとの工程から入る場合が多いんです。ただ今回わかったのは、デザイナーに早めに参加してもらい絵を描いてもらうことで、議論も具体的になるし、何より楽しい。その理由は、手描きの絵だからこその手触り感があるし、それも人を中心に描いているから、サービスやプロダクトがより身近に感じられるからだと思います。哲学的な漠としたアイデアが、一気に自分の世界に降りてくるんです。
社長にも伝えやすい
チーム内の効果だけではありません。その後社長や取締役に説明するときでも、絵があると話しやすいし、コミュニケーションツールとして伝わりやすいし、わかりやすい。そして間違いなくちゃんと見てくれるんです。本当にいいことしかないですね。次のプロジェクトでも必ず松浦さんにお願いしようと思ってます。