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組織の意志を束ねる新VALUES策定とデザインによる浸透

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  • ビジョンデザイン
  • 組織文化デザイン
  • バリューズ策定/浸透
脱炭素社会の実現に向け、急成長を続けるe-dash。社員数が100名に迫る中、同社は創業時のVALUESが組織の実態と乖離し、拠り所として機能しなくなっているという課題を抱えていました。BIOTOPEは、全社員による本音の対話から始まり、有志メンバーによる「未来新聞」でのビジョン共創、さらに専門的な理論を用いた経営層の意識変革セッションまで、多層的なプロセスを設計・支援。自社の「素顔」を直視し、2035年の理想から逆算した新たなVALUESを導き出しました。また、社内デザイナーと連携したキャラクター制作や評価制度への実装を通じ、言葉を日常の風景へと変える仕組みを構築。理論とデザインの両輪で、急成長組織が未来へ挑むための「自律的な文化の幹」を共に作り上げました。

ポイント

  1. 急成長する組織の意志を束ねる、新たなVALUESの再定義
  2. 専門的な理論に基づいたアプローチで、経営層の視座変容と深いコミットメントを創出
  3. デザインの力を活かし、VALUESが日常の風景に溶け込む浸透施策を実装

語り手

  • 山崎冬馬
    山崎冬馬
    e-dash株式会社 代表取締役社長
    三井物産株式会社に入社後、主に電力等のインフラ事業の新規案件開発及びM&Aを担当。2015年に米シリコンバレーに駐在し、エネルギーやモビリティ等のクリーンテック分野でのベンチャー投資・事業開発を担当。帰国後、e-dashの事業を企画・立案し、2022年のe-dash株式会社の設立と同時に代表取締役社長に就任。
  • 熊谷勇人
    熊谷勇人
    e-dash株式会社 コーポレート部
    エンジニア職、人材紹介エージェントを経てスタートアップで人事としてのキャリアをスタート。2024年にe-dashに一人目人事として入社し、中途採用、人事評価制度、MVVの浸透施策等、人事業務全般を担当。
  • 古込将也
    古込将也
    e-dash株式会社 コミュニケーションデザイングループ グループマネージャー
    制作会社にて広告・Webのデザインおよびディレクションを経験したのち、上場企業やスタートアップにてUI開発から広報資料まで多岐にわたる媒体制作に従事。e-dash入社後は、自社ブランドの構築やマーケティング施策の牽引、デザイン領域全般のマネジメントを担う。

組織の急拡大で生まれた温度差。一丸となって進む上で不可欠だった「100人の言葉」

山崎

私たちがVALUES(行動指針)の刷新を本格的に検討し始めたのは、社員数が100名に届こうとしていた時期でした。もともとのVALUESは、創業時に私が策定したもので、当時のメンバーの思いを言語化したものでした。しかし、それから3年が経ち、事業が軌道に乗るにつれて、創業時の言葉が実態と乖離し、機能しづらくなっていると感じる場面が増えていました。初期からのコアメンバーと、拡大期にジョインしたメンバー。その全員が一丸となって進むためには、改めてVALUESを再定義し、100人のための言葉に置き換える必要があると考えたのが、本プロジェクトの始まりです。なぜ、刷新の対象がVALUESだったのか。それは、私たちが取り組む事業の性質に理由があります。e-dashは「脱炭素」という正解のない大きな社会課題に取り組む会社です。そうした領域で価値を創出していくには、トップダウン型の軍隊のような組織ではなく、多様なバックグラウンドを持つメンバーが自律的に動きながらも、同じ方向に向いている状態が理想です。そのためには、強力なノルマやルールで縛るのではなく、全員の心の拠り所となる「共通の価値観」こそが必要だと考えました。

熊谷

プロジェクトの始動にあたり、まず全社に向けてメッセージを発信しました。その際、山崎が伝えたのは、「創業時のVALUESは創業メンバーで作ったものだが、ここからのフェーズはみんなで作るVALUESであり、みんなで大切にしていくものだ」という強い想いです。そのスタンスを形にするため、有志のプロジェクトメンバーを募り、一体感を持って進めていくことを宣言しました。創業時の熱量を一部の人間だけのものに留めず、新しく加わったメンバーも含めた全員の熱量へと変換していく。それが、今回のプロジェクトの出発点でした。

「いい人」のままでは勝てない。全社ワークショップで露呈した課題

山崎

BIOTOPEと共に最初に取り組んだのは、全社員を集めて実施したワークショップでした。5人ほどのランダムなグループに分かれ、e-dashの強みや課題を語り合ってもらったのですが、正直なところ心を揺さぶられるような衝撃を受けました。「いい会社だよね」というポジティブな意見には頷ける一方で、「ここは良くない」というネガティブな意見には、耳が痛くなるような本音が露骨に表れていたからです。もちろん、社員が会社を思って発言してくれていることは分かっています。しかし、経営者として、これらすべてに正面から向き合わなければならないのだと、改めて覚悟を突きつけられた瞬間でした。特に象徴的だったのは、自社を表すイメージとして「良い人」というキーワードが多くあがったことです。親しみやすく害はないけれど、どこか迫力に欠ける。このまま厳しい競争環境で勝っていけるのかという不安が、言葉の端々から感じられました。「ただの良い人から、勝てる良い人へ」「受け身から、全員主役へ」。現状の居心地の良さに安住せず、もっと強い組織に変わりたいという潜在的な願いが、本音として浮かび上がってきたのです。

混沌とした議論の果てに。現場と経営層の視座が揃った瞬間

熊谷

社集会での意見をベースに、次は26名の有志メンバーによる全3回のワークショップを実施しました。第1回目はお互いの本音を出し合う場としましたが、普段の業務で触れない深い部分まで対話したことで、組織のリアルな状態があらわになりました。正直、かなりカオスな状態で、グループごとに見えている景色も課題感もバラバラ。相反する意見が飛び交い、どうまとめていいか分からない重苦しい沈黙が流れることもありました。「本当に一つのVALUESにまとまるのだろうか」という不安もありましたが、あの場で膿を出し切るように本音で話し合ったことが、結果的には非常に重要でした。第2回では、ブランドの人格を定義する「アーキタイプ(元型)」を用いたワークや、「未来新聞」の作成を行いました。特に印象的だったのが、2035年に向けてe-dashがどうなっていたいかを描く「未来新聞」のワークです。参加者全員がそれぞれの未来を記事にして発表し合ったのですが、そこで描かれた未来は多様ながらも、不思議と共通していたのは、「今のままではいけない」という強い危機感と、変革へのエネルギーでした。現状と未来新聞で描かれた姿とのギャップを目の当たりにした瞬間、それまでバラバラだった視線が一つに揃いました。「良い人」であることは大切にしつつも、それだけでは足りない。未来を実現するためには、私たち自身が変わらなければならない。ワークショップ終了時の感想共有(チェックアウト)で、参加者たちが熱っぽく未来を語り合う姿を目の当たりにしたとき、ここが間違いなく組織が変わるターニングポイントになると確信しました。その熱気を受け、続く第3回のワークショップでは、見えてきた未来への兆しを「4つの方向性」へと収束させ、具体的な言葉へと磨き上げていきました。

山崎

有志によるワークショップと並行して、私と部長層8名によるセッションも計3回実施しました。これは、有志メンバーが作り上げるボトムアップの動きを、経営層がしっかりと受け止め、コミットするために設けたものです。この場もまた、非常に生々しい場でした。議論を重ねる中で、同じ経営チームであっても、見ている景色や前提が人によって全く異なっていることが浮き彫りになりました。BIOTOPEから専門的なレクチャーを受け、客観的な共通言語を得ながら対話を重ねることで、私たち経営層自身の認識もアップデートされていきました。有志メンバーのワークショップは最後まで発散し続け、簡単にはまとまりませんでした。しかし、無理に収束させず、出し切るところまで出し切った結果、私たちが最終的に導き出した4つの方向性は非常に納得感のあるものになりました。また、これを受け止める経営層側も、並行してセッションを重ねていたことが奏功しました。自分たちの認識をアップデートできていたからこそ、現場から上がってきた混沌とした熱量を、迷いなく受け入れることができたのだと思います。

「勝てる組織」へ進化するために。全社員の願いから生まれた4つのVALUES

熊谷

ワークショップを通してかき集めたみんなの思いを凝縮し、最終的にe-dashの新しいVALUESとして定まったのが、以下の4つです。これらは単なるスローガンではなく、私たちが「勝てる組織」へと進化するための誓いです。

1. 「志」で動かす
社会課題の解決には、内発的な動機が必要です。受け身ではなく、自分の意志で道を切り拓く姿勢を定義しました。
2. 本音と本気
「良い人」の心地よさに逃げず、耳の痛いことでも恐れずに口にし、本気で行動に移す。健全な衝突こそが進化に不可欠だという決意を込めています。
3. 一緒に挑む
個人の集まりでも、管理された軍隊でもない。社内のメンバーはもちろん、クライアントやパートナーとも互いに背中を預け合い、困難な壁に「一緒に挑む」戦友としてのチームワークを掲げました。
4. 未来を変える
現状の延長(フォアキャスト)ではなく、ありたい未来からの逆算(バックキャスト)で今の行動を決める。未来を変えるための思考法を、最大の武器として据えました。

これらの言葉は、誰か一人がトップダウンで決めたものではなく、全社員の「モヤモヤ」と「願い」の中から紡ぎ出されたものです。だからこそ、単なる綺麗な言葉に留まらず、私たちの血肉となる言葉になったと確信しています。

キャラクター開発と人事制度。言葉を「日常」に浸透させるための仕組み

古込

言葉としてのVALUESが決まった後、それをどうやって社内に浸透させていくか。ここからが本当の勝負でした。単に言葉をポスターにして貼るだけでは意味がありません。BIOTOPEのデザインチームと連携し、私たちのチームも手を動かしながら、VALUESを体現するキャラクターや世界観を作り上げていきました。当初は戦隊モノや恐竜といったインパクト重視の案も検討されましたが、私たちが求めていたのは「強さ」よりも、迷った時にそっと寄り添ってくれる存在。そうして生まれたのが、少し不思議で愛らしい、妖精のようなキャラクターたちです。「ココロザシくん」や「ホンキくん」と名付け、それぞれのVALUESを体現する性格も設定しました。あえて人間味を消しつつも、愛嬌のあるフォルムにすることで、誰もが自分を投影できるようにしました。日常のコミュニケーションの中でも自然とVALUESが使われるよう、Slackのスタンプも作成しました。キャラクターが動くアニメーションスタンプは社員にも好評で、会話の中にふとVALUESが登場するきっかけになっています。また、PCのデスクトップ壁紙も作成し、社員のリクエストに応えてバリエーションを増やすなど、デザインチームとしても楽しみながら制作を進めました。この壁紙は、社内外のコミュニケーションの潤滑油にもなっています。デザインの力が、言葉だけでは届かない領域を補完し、浸透を加速させてくれていると感じています。

熊谷

現在、新しいVALUESは評価指標にも組み込まれています。業務上のパフォーマンス評価とは別に、VALUESに沿った行動が取れているかを評価する「バリュー評価」を設けています。これにより、VALUESは単なるスローガンではなく、日々の行動指針として明確に機能し始めています。また、様々な対話の施策を通じて、VALUESを共通言語にする機会も増やしています。以前よりも、社員の口から自然とVALUESに関連する言葉が出る回数が増えたと感じていますし、社長の山崎が主催する会議の名前が「未来を変える会議」に変更されたのも象徴的な変化の一つです。言葉を変え、デザインを変え、仕組みを変える。それらが連動することで、組織の意識が少しずつ、しかし確実に変化している手応えがあります。

タネは残ったか?

山崎
e-dashは創業4年目を迎えますが、このプロジェクトにはそのうちの1年間を費やしました。会社の歴史の25%にあたる時間を、全社員を巻き込んでこの取り組みに捧げてきたのです。それだけのリソースと熱量を注ぎ込んできたVALUESは、もはやタネというレベルではなく、会社を支える太い幹そのもの。これからも手を抜くことなく、この幹を大切に育てていきたいと思っています。
熊谷
すべては一本の線でつながっていると考えています。社内だけでなく社外に対してもVALUESを発信し、共感の輪を広げていくことが、会社としてのさらなる成長につながると信じています。まだ道半ばではありますが、この幹からどんな花が咲くのか。私自身も楽しみにしています。
古込
デザインの観点からも、このプロジェクトを通じて生まれたキャラクターというタネを、これからは私たちが広げ、咲かせていくフェーズに入ります。100人で作り上げたVALUESというバトンを受け取り、デザインというあらゆるタッチポイントを通じて、さらに浸透させていく。人事評価や日々のコミュニケーションと連動させながら、楽しみながらいろいろな仕掛けを作っていきたいと思っています。