ユーザーの実感を重視した次世代スマート文具の開発

ポイント
- ユーザーの生活に直接触れ、実感と肌感覚でインサイトをつかむ
- 自分たちの手法を用いたプロセスを実施できるようにする
- 新規事業で試みたプロセスを既存商品の開発にも展開する
語り手
田島 宏ぺんてる 経営戦略室広報課課長
1991年ぺんてる入社。主に筆記具・画材以外の新規事業の立ち上げ、商品企画、マーケティング、営業などを担当。2012年マーケティング推進部にてスマート文具を立ち上げる。現在は経営戦略室広報課所属。
中沢英和ぺんてる 商品開発本部デザイン室プロダクトデザイングループ課長
多摩美術大学卒業後、1998年ぺんてる入社。デザイン室にて、筆記具を中心に文具製品のプロダクトデザインから、ブランドロゴまでデザイン全般を担当。スマホアプリと蛍光マーカーを組み合わせた「アンキスナップ」等のスマート文具にも携わる。
デザイン思考のプロセスに共感
2年前、スマート文具を開発するための企画を考えていたときに、なかなか答えが出てこなかったんです。そんな矢先に佐宗さんの著書『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』に出合い、左脳型の人間も右脳を使うという佐宗さんのデザイン思考なら自分たちにもできるかもしれないと思い、セミナーに伺って直接お願いしたことでプロジェクトがスタートしました。デザイン思考の、仮説を立てて現場でプロトタイピングし、ユーザーに共感してもらえるものをつくるサイクルを回すプロセスに共感し、ぜひ試してみたいなと。
考え方やプロセスを構造化
僕はデザイナーなので基本的に右脳型で考えているんですが、それまでは直感的にいいと思ったものを会社に対してロジカルに説明できなかったんです。だからといって定量調査で評価されたものを商品化しても売れない。本当に実感としてやりたかったことと、会社を説得できる企画のずれを痛切に感じていました。そんなときに佐宗さんの、ものごとを編集していくやり方が刺さった。右脳と左脳の両方を使ってデザインしていくことに可能性を感じたんです。
何よりも実感が大切
今回のプロジェクトでご一緒した、ノート型の付箋をメインにしたスマート文具「くみかえノート」の企画段階では、BIOTOPEさんとユーザーに直接話を聞きに行きましたが、女子高生の部屋にまで入ってインタビューするのはとても刺激的で、大きな気づきがありました。あのエスノグラフィックリサーチによって、何よりも実感が大切だということがわかりました。ユーザーの生活に直接触れることではっきり見えてくるものがあった。
自分たちでもできるように
プロジェクトは3カ月の短期ビジョンで、ワークショップをやったりユーザーに話を聞いたりして、プロジェクト終了時には「くみかえノート」の原型ができてきました。その後はBIOTOPEさんの方法論を見よう見まねでやることで、結果自分たちでエスノグラフィックリサーチやワークショップのファシリテーションも少しずつできるようになりました。なかでもいちばん学んだのはインタビューのプロセスですね。最初は不安でしたが、最近は経験を積んで場慣れしてきた気がします。それをできるようになったことはとても大きいですね。
手を動かす楽しさを大事に
エスノグラフィックリサーチのなかで、デジタル全盛の時代だからこそ、逆に実感のあるものをみんなが求めていることを感じています。今若者に写ルンですが人気ですが、こういう時代だからこそプロセスを楽しむ動きがある。うちは筆記具メインのアナログな会社なので、こういう動きにこそチャンスがあると思います。だからこそスマート文具であっても、手を動かす楽しさを大事に伝えていきたいですね。
トレンド発想でユーザー検証
BIOTOPEさんとのプロジェクトが終了してからも、トレンド発想でユーザー検証を行うデザイン思考を活用したいくつかプロジェクトが動いています。ただ「デザイン思考のほうが楽しいよ」と巻き込めているのは社内でも小規模。根強い定量データ重視の文化をどう変えていくのかが、今後も重要ですね。ぜひまたご一緒したいと思っています。

